人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

綾部恒雄(編) 『文化人類学15の理論』

綾部恒雄(編)
 1984文化人類学15の理論』中公新書





目次
はじめに 綾部恒雄
1. 文化進化論 黒田信一
2. 文化伝播主義 クネヒト・ペトロ
3. 機能主義人類学 田中真砂子
4. 文化様式論 綾部恒雄
5. オランダ構造主義 宮崎恒二
6. 文化とパーソナリティ論(心理人類学) 箕浦康子
7. 新進化主義 松園万亀雄
8. マルクス主義と人類学 小野沢正喜
9. 構造主義 吉岡政徳
10. 生態人類学 田中二郎
11. 象徴論 梶原景昭
12. 認識人類学 福井勝義
13. 解釈人類学 小泉潤二
14. 文化記号論 関一敏
15. 現象学と人類学 浜本満

内容紹介(帯より)
 文化人類学の成果があらゆる分野で引用・利用されるようになったが、それが必ずしも正しい理解に基づいているとはいいがたいことが多い。
 本書は、モーガン以降の文化人類学理論の流れを進化論から機能主義をへて講義の構造主義への展開としてみる立場から15の学説に分けて、それぞれ背景・特質・展望を中心に分析、解説する。これから文化人類学を学ぶ人はもちろん、他分野の専門家にも十分役立つ、学説史の入門書である。


一言コメント
 文化人類学徒なら必ず目を通すべき入門書の古典。確かに古いし、「オランダ構造主義」のようにいまではほとんど顧みられなくなった理論もあるとはいえ、日本における人類学教育は現在まで間違いなく本書が一つの雛型になっています。すでに亡くなった方も多く、浜本満が当時32歳で気鋭の若手というのも歴史を感じます。
 帯の内容紹介について文脈を補足しておくと、当時はいわゆるニューアカがブームになっており、そこでは文化人類学の知見が都合よく利用されていた状況があったため、正統派アカデミアの側から一般向けにきっちり学説史を説明しておきたいという背景があったわけです。