人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

岸上 伸啓 『贈与論再考』

岸上 伸啓

 2016 『贈与論再考 ――人間はなぜ他者に与えるのか』 臨川書店

 

目次

はじめに (岸上伸啓)

第1部 モースの「贈与論」とその後の展開

第1章 『贈与論』再考―人類社会における贈与、分配、再分配、交換(岸上伸啓)

第2部 贈与以前

第2章 贈与以前―ヒト科類人猿の食物分配(岩田有史・田島知之)

第3部 モースの「贈与論」の再検討

第3章 ポトラッチとは、ポトラッチにおける贈与とは(立川陽仁)

第4章 アラスカ先住民社会における伝統食分配とポトラッチの社会的意義(井上敏昭)

第5章 毒と贈り物―先住民エンベラにおける社交の想像から見る贈与(近藤宏)

第6章 ヴァス論再考―フィジーにおけるある贈与関係の変遷(丹羽典生)

第7章 カザフスタンにおける喜捨の展開―アッラー・死者・生者の関係に着目して(藤本透子)

第4部 「贈与論」の新展開

第8章 誰と分かちあうのか―サンの食物分配にみられる変化と連続性(丸山淳子)

第9章 <借り>を回すシステム―タンザニアにおける携帯による送金サービスを事例に(小川さやか)

第10章 現代モンゴル国における贈与―ゲルとその部品のバイオグラフィーより(風戸真理)

第11章 災害支援と贈与―20世紀前半の婦人会活動を事例として(山口睦)

第12章 「反-市場」としての贈与―南フランスの青果市場の事例から(中川理)

おわりに (岸上伸啓)

 

内容紹介

古今東西を通じて人と人のあいだには様々なモノのやりとりが存在する。このモノのやりとりについて、文化人類学の分野では、1925年に発表されたマルセル・モースの『贈与論』を契機に、「贈与」という概念が定着し、多くの研究成果が生み出されてきた。本書では、世界各地で活躍する現役の研究者たちが収集した多様な事例をもとに、モースの『贈与論』を出発点とする諸研究を検証しつつ、人間社会に見られる「与える」という行為について再検討する!

 

一言コメント

 こちらは贈与をテーマにした論集で、同じく国立民族学博物館の共同研究を基に編まれたもの。寄稿者は先の『再分配のエスノグラフィ』よりも年長世代の人々が多めになっています。少し部の構成がバランス悪いようにも思えますが、贈与論の基礎的なところから現代における意義まで網羅的に扱われているので、初学者からベテランまで得るところの多い一冊になっているのではないでしょうか。