人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

松村圭一郎 『所有と分配の人類学』

松村圭一郎
2008 『所有と分配の人類学 ――エチオピア農村社会の土地と富をめぐる力学』世界思想社 

 

目次

はじめに 「わたしのもの」のゆらぎ
凡例

序論
 第1章 所有と分配の人類学
 第2章 多民族化する農村社会

第I部 富をめぐる攻防
 第3章 土地から生み出される富のゆくえ
 第4章 富を動かす「おそれ」の力
 第5章 分配の相互行為
 第6章 所有と分配の力学

第II部 行為としての所有
 第7章 土地の「利用」が「所有」をつくる
 第8章 選ばれる分配関係
 第9章 せめぎあう所有と分配

第III部 歴史が生み出す場の力
 第10章 国家の所有と対峙する
 第11章 国家の記憶と空間の再構築
 第12章 歴史の力

結論
 第13章 所有を支える力学

 

内容

人びとは、富をいかに分け与え、「自分のもの」として独占しているのか?エチオピアの農村社会を舞台に、「所有」という装置が、いかに生成・維持されているのかを緻密に描き出す。「私的所有」という命題への人類学からの挑戦。 

 

一言コメント

 現在もっとも注目されている人類学者の一人、松村氏のデビュー作にして2010年の澁澤賞受賞作。エチオピアにおける所有をテーマにした民族誌ですが、私的所有に対して共同の所有を対置するといった単純なかたちでの相対化あるいは非西洋社会の称揚ではなく、そもそも所有とはなにか、人はなぜ所有するのかといった根源的な問いにまで遡る刺激的な論考です。