人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

レヴィ=ストロース 『野生の思考』

レヴィ=ストロース、クロード

 1976(1962) 『野生の思考』大橋 保夫(訳)、みすず書房

 

 

目次


第一章 具体の科学
第二章 トーテム的分類の論理
第三章 変換の体系
第四章 トーテムとカースト
第五章 範疇、元素、種、数
第六章 普遍化と特殊化
第七章 種としての個体
第八章 再び見出された時
第九章 歴史と弁証法

 

内容(出版社サイトより)

 野生の思考La Pensee sauvageは、1960年代に始まったいわゆる構造主義ブームの発火点となり、フランスにおける戦後思想史最大の転換をひきおこした著作である。
 Sauvage(野蛮人)は、西欧文化の偏見の凝集ともいえる用語である。しかし植物に使えば「野生の」という意味になり、悪条件に屈せぬたくましさを暗示する。著者は、人類学のデータの広い渉猟とその科学的検討をつうじて未開人観にコペルニクス的転換を与えsauvageの両義性を利用してそれを表現する。
 野生の思考とは未開野蛮の思考ではない。野生状態の思考は古今遠近を問わずすべての人間の精神のうちに花咲いている。文字のない社会、機械を用いぬ社会のうちにとくに、その実例を豊かに見出すことができる。しかしそれはいわゆる文明社会にも見出され、とりわけ日常思考の分野に重要な役割を果たす。
 野生の思考には無秩序も混乱もないのである。しばしば人を驚嘆させるほどの微細さ・精密さをもった観察に始まって、それが分析・区別・分類・連結・対比……とつづく。自然のつくり出した動植鉱物の無数の形態と同じように、人間のつくった神話・儀礼・親族組織などの文化現象は、野生の思考のはたらきとして特徴的なのである。
 この新しい人類学Anthropologieへの寄与が同時に、人間学Anthropologieの革命である点に本書の独創的意味があり、また著者の神話論序説をなすものである。
 著者は1959年以来、コレージュ・ド・フランス社会人類学の教授である。

 

 

一言コメント

 レヴィ=ストロースの代表作にして構造主義人類学の金字塔。一見すると不合理な「未開」社会の思考も、進んだものと我々が思い込んでいる「科学的」思考も、二項対立に基づく人類普遍の思考様式をベースにしていることを指摘し、そこでは項よりも関係が重要であることが論じられます。この極端な普遍志向・科学主義は、今ではちょっと受け入れがたいところもあるけれど、人類学に限らず思想界の状況を一変させるほどの影響を持っていた一冊です。