橋本栄莉 2018 『エ・クウォス』
橋本 栄莉
2018 『エ・クウォス』 九州大学出版会
目次
はじめに
序 章 動乱の時代と予言
第1部 「予言者」の歴史的生成過程
第1章 予言者/魔術師の成立
第2章 内戦・平和構築と予言者
第2部 経験の配位
第3章 多産と時間
第4章 不妊と予言
第3部 クウォスの顕現
第5章 「予言の成就」としての国家の誕生
第6章 「エ・クウォス」の経験をめぐる真と偽
第7章 存在の別様式への気づき
終 章 隠された経験の領域
内容
本書は、スーダン地域における「予言者」の歴史的生成過程を明らかにするとともに、ヌエル社会において語り継がれてきた予言が、人びとの紛争経験や出来事をどのように形づくってきたのかを、約19か月の現地調査に基づき明らかにしようとするものである。19世紀に存在したヌエルの予言者ングンデンによってつくられた予言の歌は、現在に至るまで歌い継がれ、ヌエルの人びとが苦難の経験を語るすべとなってきた。「エ・クウォス」とは、ヌエルの人びとがさまざまな出来事に直面した際に「予言が成就した」という意味合いで用いる表現である。本書は、内戦、平和構築、悲願の国家独立、そして再び内戦へと突入する南スーダンの動乱の時代に、予言者への信念と疑念の間で揺れるヌエルの人びとが、さまざまな想像力とともに不幸や不条理を語る技法を探究したものである。