人類学の書籍紹介

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ギアツ 1990(1980) 『ヌガラ――19世紀バリの劇場国家』

ギアツ、クリフォード

 1990(1980) 『ヌガラ――19世紀バリの劇場国家』小泉潤二(訳)、みすず書房 

ヌガラ――19世紀バリの劇場国家

ヌガラ――19世紀バリの劇場国家

 

 

目次

緒言

序章 バリと歴史学的方法

第1章 政治的定義づけ――秩序の源

 模範的中央の神話

 地誌と権力均衡

第2章 政治の解剖――支配階級の内部組織

 出自集団と沈降する地位

 主従関係

 同盟関係

第3章 政治の解剖――村落と国家

 村落の政体

 プルブクル体系

 灌漑の政治

 通商の形態

第4章 政治的言述――演出と式典

 権力の象徴論

 寺院としての宮殿

 火葬と地位抗争

結論 バリと政治理論

 

内容

かつてバリ島には数百もの小王国“ヌガラ”があった。本書は、そこに見られる親族・社会関係、農業・通商組織、政治関係、そして国家儀礼・宗教観念・神聖王制の研究から、非常に刺激的な国家論―劇場国家論―を構築する。

 

 

一言コメント

 国家があるから儀礼を催行するというよりも、むしろ儀礼を催行するために国家があるとする「劇場国家」論を提示した古典的名著。本書の半分を占める注や、国家の儀礼が少しずつ縮小しながら末端の村々の儀礼へと再生産されてゆくフラクタル的な構造の分析も見どころです。