片倉もとこ 1991 『イスラームの日常世界』
片倉もとこ
目次
はじめに
Ⅰ 人間は強いか弱いか
Ⅱ 祈りと仕事のいい関係
Ⅲ 「ベール」の下の女の世界
Ⅳ 断食月は楽しい
Ⅴ メッカへ、メッカへ
Ⅵ なるべく動きたまえ
Ⅶ 何がいちばん大切か
むすびにかえて――イスラームと近代化
あとがき
内容
イスラームは,いまや第三世界にとどまらず地球的規模に広がっている.その世界観が,幅広い世代にわたって,十億もの人びとの心をひきつけるのはなぜか.長年,世界各地の実情を見てきた著者が,生活体系としてのイスラームを,断食,礼拝,巡礼などの基本的な生活習慣や,結婚・職業観などから語り,その真髄を解き明かす.
一言コメント
1960年代の末に当時は不可能だと思われていたサウジアラビアでの長期調査を敢行し、日本の中東研究を切り開いた片倉もとこ氏。現在はみんぱくで回顧展「サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年 ―「みられる私」より「みる私」」も開かれるなど、再評価の機運が高まっています。しばしばテロや女性の抑圧などと絡めた欧米的な偏見の目で見られるイスラーム文化を、例えば女性のヴェールは抑圧ではなく女性が見られることなく見るための装置なのだといったように、日常生活の観点から捉え直してゆきました。本書は平易ながら片倉イスラーム学のエッセンスがつまった、イスラームや片倉もとこを知るためのもっとも手に取りやすい一冊。いわゆる多文化社会化が不可逆的に進行する現在、必読の一冊だと言ってよいでしょう。