床呂郁哉・河合香吏(編) 2011 『ものの人類学』
床呂郁哉・河合香吏(編)
2011 『ものの人類学』 京都大学学術出版会
目次
プロローグ:ものをして語らせよ
序章:なぜ「もの」の人類学なのか?[床呂郁哉・河合香吏]
第Ⅰ部 「もの」の生成・消滅・持続
1章 かたち・言葉・物質性の間 ――陝北の剪紙が現れるとき[丹羽朋子]
2章 潜むもの,退くもの,表立つもの ――会話におけるものと身体の関わり[菅原和孝]
第Ⅱ部 「もの」と環境のネクサス
3章 「もの」の御し難さ ――養殖真珠をめぐる新たな「ひと/もの」論[床呂郁哉]
4章 土器文化の「生態」分析 ――粘土から「もの」へ[印東道子]
エッセイⅠ 現れる「もの」
1 名前がかたちを得る場:ものと経験を動員するジャワバティックの伝統文様[佐藤純子]
2 カシュタが人を動かす:ウズベク刺繍がもつ「もの」の力[今堀恵美]
3 ものと人の関係性の「遊び」:バナナと人間は依存しあっているか?[小松かおり]
第Ⅲ部 「もの」と身体のダイナミクス
5章 土器つくりを知っている ――エチオピアの女性土器職人の「手」と技法の継承[金子守恵]
6章 男性身体と野生の技法 ――強精剤をめぐる自然・もの・身体[田中雅一]
エッセイⅡ 妖(怪)しい「もの」
1 パゴダと仏像のフェティシズム[土佐桂子]
2 身体から吸い出される「もの」:ラダックのシャーマニズム儀礼より[宮坂 清]
第Ⅳ部 「もの」のエージェンシー
7章 仮面が芸能を育む ――バリ島のトペン舞踊劇に注目して[吉田ゆか子]
8章 「生きる」楽器 ――スリンの音の変化をめぐって[伏木香織]
9章 ものが見せる・ものに魅せられる ――インドの占い師がもたらす偶然という「運命」[岩谷彩子]
エッセイⅢ 揺らぐ「もの」
1 グローバル化するアボリジニ絵画,ローカル化する「芸術」[窪田幸子]
2 太平洋諸島移民アーティストの身体と芸術のかたち[山本真鳥]
3 ほんものであり続けること:「紅型」と「琉球びんがた」のあいだ[村松彰子]
第Ⅴ部 新たな「もの」論へ
10章 道具使用行動の起源と人類進化[山越 言]
11章 霊長類世界における「モノ」とその社会性の誕生[黒田末寿]
12章 身体と環境のインターフェイスとしての家畜 ――ケニア中北部・サンブルの認識世界[湖中真哉]
13章 チャムスの蝉時雨 ――音・環境・身体 [河合香吏]
エピローグ:意志なき石のエージェント性 ――「もの」語りをめざして[内堀基光]
あとがき
内容
人を動かすのはモノである。だからこそ、いわゆる物質文化研究ではない、真に【モノを主人公にした】人間中心主義を 越えた人類社会論を構 築するのだ。熟練の逆説/ものの介入/記号的なものの物質性/アフォーダンス等々——音や会話といった事象をも対象に斬新な方法・ 視点と溌剌とした議論で、新しい人類学を拓く秀作。
一言コメント
日本の人類学における「マテリアリティ・ターン」を牽引した記念すべき論集。欧米では2000年代初頭より、ブルーノ・ラトゥールやダニエル・ミラーの強い影響の下に人間中心主義を越えてモノのエージェンシーを探ろうという機運が高まっており、それがようやく日本でも受容されるようになったわけです。言うまでもなく人間もモノの一つなのだから当たり前の方向性ではあるのですが、自分だけは特別だと思いたい人間の傲慢さにはなかなか根深いものがありますよね。(必ずしも本書への批判ではありません)
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Materiality (Politics, History, and Culture)
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