中沢新一(監修) 2016 『現代思想2016年3月臨時増刊号 総特集=人類学のゆくえ』
中沢新一(監修)
2016 『現代思想2016年3月臨時増刊号 総特集=人類学のゆくえ』 青土社
目次
討議Ⅰ
人類学=物語的想像力の“不自由な”跳躍 (中沢新一+上橋菜穂子)
テクスト
自然の人類学 ――コレージュ・ド・フランス教授就任講義[二〇〇一年二月二九日(木)] (Ph. デスコラ、矢田部和彦(訳))
歴史のモノたち ――出来事とイメージの解釈 (M・ストラザーン、深川宏樹(訳))
アメリカ先住民のパースペクティヴィズムと多自然主義 (E・ヴィヴェイロス・デ・カストロ、近藤宏(訳))
形而上学的転回? ――ブルーノ・ラトゥール『存在様態探求 近代の人類学』について (P・マニグリエ、近藤和敬(訳))
ガタリと人類学 ――アボリジニと実存的領土 (B・グロチュスキ、荒武裕一郎+石川典子(訳))
『ドゥルージアンの交差点』序論 (C・イェンセン+K・ロジェ、藤井真一(訳))
討議Ⅱ
新たな〈現実〉を描く ――「静かな革命」以降の人類学と科学・自然・人間 (春日直樹+檜垣立哉)
人類学の「存在論的転回」
イメージと力の人類学 ――または、人類学はなぜ思想的企てであり続けるべきなのか? (箭内匡)
方法論的独他論の現在 ――否定形の関係論にむけて(久保明教)
人新世の時代における実験システム ――人間と他の生物との関係の再考へ向けて (鈴木和歌奈+森田敦郎+L・N・クラウセ)
『森は考える』を考える ――アヴィラの森の諸自己の生態学 (奥野克巳)
動物を夢見る ――北方狩猟民カスカにおける動物への畏れからみる対称性 (山口未花子)
対岸のアラベスク ――マイケル・タウシグと樺太先住民 (金子遊)
×哲学
アンチ・ナルシスの射程 ――ヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学』に寄せて (檜垣立哉)
普遍的精神から、ネットワーク状のプシューケーでなく、特異的プシューケーへ ――思考の脱植民地化とEndo-epistemologyへの転回のために (近藤和敬)
×芸術
キリスト像のキマイラ的変容 ――イメージの記憶をめぐる歴史人類学試論 (水野千依)
チャート
今日の人類学地図 ――レヴィ=ストロースから「存在論の人類学」まで (石倉敏明)
内容
人類学の「存在論的転回」にして「静かな革命」!
「自然/文化」の大分割を超えた新しい〈人間〉の様態を活写する未聞の試行。
中沢新一氏監修による総力特集。
一言コメント
文化人類学の最新潮流を紹介しつつ現代思想や他分野との接点を探るという趣旨は非常に良いのですが、翻訳テクストの選定基準のちぐはぐさや、実際のところこの潮流とは無関係の中沢新一を中心にしたチャートなど、疑問に感じる場所もかなり多いように思います。また誰かも指摘していた通り、一部の訳文には大きな問題があることも確かです。「討議Ⅱ」と「人類学の「存在論的展開」」のパートは良いので、本書についてはそこだけ読めばよいかなと。文化人類学の最新潮流について日本語論文を通して知りたい人は、むしろ本書の続刊にあたる『人類学の時代』から手に取ることをお勧めします。
追記
見つけました、これですね。評価は差し控えます。