人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

青土社 2017 『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=人類学の時代』

青土社

 2017 『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=人類学の時代』 青土社 

現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎人類学の時代

現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎人類学の時代

 

  

目次

討議

人類の自然 (中沢新一+山極寿一)

 

テクスト

自然の構築 ――象徴生態学と社会的実践 (Ph・デスコラ、難波美芸(訳))

アンデス先住民のコスモポリティクス ――「政治」を超えるための概念的な省察 (M・デ・ラ・カデナ、田口陽子(訳))

複数種の民族誌の登場 (S・E・カークセイ+S・ヘルムライヒ、近藤祉秋(訳))

根こそぎにされたランドスケープ(と、マツタケ採集という穏やかな手仕事) (A・R・ツィン、藤田周(訳))

自然の島々 ――モンゴル北部における孤立したモノと凍りついた精霊たち (M・A・ピーダーセン、里見龍樹(訳))

大地、空、風、そして天候 (T・インゴルド、古川不可知(訳))

 

人類学の自然

ブリコラージュ、進化、メーティス ――文化と自然の統合 (出口顯)

自然主義を越えて ――自然と身体の人類学のための一考察 (箭内匡)

絶滅の人類学 ――イヌイトの「大地」の限界条件から「アンソロポシーン」時代の人類学を考える (大村敬一)

社会の内なる野生 ――宇宙論の境界を更新するイヌとオオカミ (石倉敏明)

皮膚という表面 ――パナマ東部先住民エンベラの身体の形象 (近藤宏)

 

×哲学

非・ホーリズム的転回 ――人類学から現代哲学へ (清水高志)

どのように線を描けばよいのか ――ティム・インゴルドの場合 (柳澤田実)

 

×美学

装いの系譜学 ――記号学的モデルとしての紋章から有機的モデルとしての織物まで (T・ゴルセンヌ、筧菜奈子(訳))

イメージにおける自然と自然の「大分割」を超えて ――イメージ論の問題圏(三) (岡本源太)

 

内容

人類学のこれからを最新の知見から解き明かす

 

人間と自然との関係性のネットワークを再考しながら、今とは別の生のあり方を構想する試み。「存在論的転回」を果たした人類学の汲み尽くしえないポテンシャルを総覧。『現代思想*人類学のゆくえ』の続編にもあたる、人類学の最前線。

 

一言コメント

 格段にレベルの上がった『人類学のゆくえ』の続編。まず原著論文としては出口論文と箭内論文がすばらしい。最新動向をきっちり踏まえつつ自由にイメージを飛翔させてゆくあり方には、日本語でもCultural Anthropology誌的なスタイルで試行することが可能であることを確信させてくれます。また翻訳論文についてはセレクトが良く、訳文の精度も(完全ではないにせよ)大幅に向上しているので、現代人類学のリーディングスとしても有用です。2018年以降は続編が出ていないようで、それだけが残念です。