川喜田二郎 1967 『発想法 ――創造性開発のために』
1967 『発想法 ――創造性開発のために』 中央公論新社(中公新書136)
目次
まえがき
Ⅰ 野外科学――現場の科学
Ⅱ 野外科学の方法と条件
Ⅲ 発想をうながすKJ法
Ⅳ 創造体験と自己変革
Ⅴ KJ法の応用とその効果
Ⅵ むすび
内容(カバーより)
長い間、書斎科学・実験科学だけにとじこもっていたわれわれは、“現場の科学”ともいうべき野外科学的方法に眼をむけるときにきている――と提言する著者が、問題提起→外部探検(情報集め)→観察→記録→分類→統合にいたる野外科学的方法とその応用について具体的に説きながら、独創的発想をうながす新技術として著効をうたわれるKJ法の実技と効用とを公開する。職場で書斎で、会議に調査に、欠かせぬ創造性開発のための必読書。
一言コメント
高名なヒマラヤ研究者である著者が開発した発想法の古典、KJ法を解説した名著。KJ法自体は周知のことと思いますので説明しませんが、改めて読み直してみると書斎科学(人文学)でも実験科学(自然科学)でもない第三の科学として野外科学を定義する先見性や、ブレインストーミングとPERT法を組み合わせたときにKJ法は真価を発揮するいう発想法同士の相乗効果の指摘など新たな発見も多々ありました。本書自体がKJ法によって書かれており、各章の扉にはその章のもとになった図解が示されているので、著者の実際の思考の跡もうかがえて興味深いです。
ただ時代の制約か、どうしても国民性の議論に走ってしまうところには古さも感じます。良くも悪くも高度経済成長で勢いに乗り、海外への再進出も果たした日本を背景に、増え続ける情報をどう整理して日本人を強くしてゆくかという問題意識から生まれた発想法なのだなというところも新しい気づきでした。