人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

川田順造 2014 『〈運ぶヒト〉の人類学』

川田順造

 2014 『〈運ぶヒト〉の人類学』岩波書店(岩波新書)

 

目次

1 なぜ、「運ぶヒト」か?

2 文化の三角測量

3 「身体技法」としての運び方

4 「技術文化」と運搬法

5 「運ぶヒト」のゆくえ

 

内容

アフリカで生まれ、二足歩行を始めた人類は、空いた手で荷物を運び、世界にちらばっていった。この〈運ぶ〉という能力こそが、ヒトをヒトたらしめたのではないか? アフリカ、ヨーロッパ、東アジアの三つの地点を比較対照し、〈運ぶ〉文化の展開と身体との関係を探る。人類学に新たな光を当てる冒険の書

 

 

一言コメント

 人類学界のレジェンド、80を過ぎてますます意気軒高な川田順造先生が、運ぶという行為に着目して人類を論じる新書。二足歩行が生活に必要なモノを運ぶことを可能にし、人類の拡散を促したという仮説を提示するとともに、世界各地で見られる運搬方法の多様性を彼の言う「三角測量」、三地域間の比較によって浮き彫りにしてゆきます。根源的かつ読みやすく、まさに円熟の議論と言ってよいでしょう。