人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

大石高典ほか(編) 2019 『犬からみた人類史』

大石高典・近藤祉秋・池田光穂(編)

 2019 『犬からみた人類史』 勉誠出版

犬からみた人類史

犬からみた人類史

 

 

目次 

序章 犬革命宣言―犬から人類史をみる

 

第1部:犬革命

第1章 イヌはなぜ吠えるか―牧畜とイヌ 藪田慎司

第2章 犬を使用する狩猟法(犬猟)の人類史 池谷和信

第3章 動物考古学からみた縄文時代のイヌ 小宮孟

第4章 犬の性格を遺伝子からみる 村山美穂

第5章 イヌとヒトをつなぐ眼 今野晃嗣

第6章 犬祖神話と動物観 山田仁史

【コラム1】文明と野生の境界を行き来するイヌのイメージ 石倉敏明

【コラム2】人と関わりをもたない犬?―オーストラリア先住民アボリジニディンゴ 平野智佳子

 

第2部:犬と人の社会史

第7章 カメルーンバカ・ピグミーにおける犬をめぐる社会関係とトレーニング 大石高典

第8章 猟犬の死をめぐる考察―宮崎県椎葉村における猟師と猟犬の接触領域に着目して 合原織部

第9章 御猟場と見切り猟―猟法と犬利用の歴史的変遷 大道良太

第10章 「聞く犬」の誕生―内陸アラスカにおける人と犬の百年 近藤祉秋

第11章 樺太アイヌのヌソ(犬ぞり) 北原次郎太

第12章 忠犬ハチ公と軍犬 溝口元

第13章 紀州犬における犬種の「合成」と衰退―日本犬とはなんだったのか 志村真幸

第14章 狩猟者から見た日本の狩猟犬事情 大道良太

【コラム3】南方熊楠と犬―「犬に関する民俗と伝説」を中心に 志村真幸

 

第3部:犬と人の未来学

第15章 境界で吠える犬たち―人類学と小説のあいだで 菅原和孝

第16章 葬られた犬―その心意と歴史的変遷 加藤秀

第17章 犬をパートナーとすること―ドイツにおける動物性愛者のセクシュアリティ 濱野千尋

第18章 ブータンの街角にたむろするイヌたち 小林舞・湯本貴和

第19章 イヌとニンゲンの〈共存〉についての覚え書き 池田光穂

【コラム4】イヌのアトピー性皮膚炎 牛山美穂

【コラム5】シカ肉ドッグフードからみる人獣共通のウェルビーイング 立澤史郎・近藤祉秋

 あとがき

 

内容

犬をめぐる刺激的な思考実験の旅!

人は最も身近なパートナーである犬と、どのようにして関係を築いてきたのか?進化生物学から、文化人類学民俗学、考古学、実際の狩猟現場……、過去から未来まで、様々な角度からとらえた犬の目線で語られる、「犬好きの、犬好きのための、犬好きの執筆陣による」全く新しい人類史!!

 

 

根本達 2018 『ポスト・アンベードカルの民族誌』

根本達

 2018 『ポスト・アンベードカルの民族誌 ――現代インドの仏教徒と不可触民解放運動』 法蔵館

 

目次

序章 研究の視座:同一性の政治学と生活世界における寛容

第一章 フィールドワークについて

第二章 歴史的背景:一九五六年以前と一九五七年以降

第三章 反差別の取り組みと自己尊厳の獲得

第四章 仏教儀礼とカテゴリー化を逃れる意味の創出

第五章 超自然的な力と対面関係の網の目の構築

第六章 「団結か、愛情か」という二者択一の問い

第七章 「過激派」のアイデンティティ・クライシス

第八章 「半仏教徒・半ヒンドゥー教徒」の戦術的な試み

第九章 佐々井秀嶺による矛盾する実践

終章 隠蔽される声、等質性なき連帯、生成変化の政治学

参考文献、あとがき、索引

 

内容

ヒンドゥー教から仏教への集団改宗から半世紀、「父なる指導者」亡き後の不可触民解放運動の現在。自己尊厳を希求する活動家たちの闘争、改宗後もヒンドゥー教の神を信仰する在家信者、被差別者の中から被差別者が生まれる矛盾、アンベードカルの意思を継ぐ佐々井秀嶺の宗教実践。ナーグプル市の反差別運動を巡って立ち現れる「対立と寛容」を仏教徒(元不可触民)の視点から描き出す。

 

 

 

相馬拓也 2018 『鷲使いの民族誌』

相馬拓也

2018 『鷲使いの民族誌 ――モンゴル西部カザフ騎馬鷹狩文化の民族鳥類学』 ナカニシヤ出版 

鷲使いの民族誌?モンゴル西部カザフ騎馬鷹狩文化の民族鳥類学?

鷲使いの民族誌?モンゴル西部カザフ騎馬鷹狩文化の民族鳥類学?

 

 

目次

序章 ヒトと猛禽の交渉譜――鷹狩研究が民族鳥類学に果たす役割

第1章 イヌワシとの出会いと別れ――イヌワシの捕獲術と産地返還の掟

第2章 イヌワシを馴らす――イヌワシ馴致をめぐる知と技法

弟3章 イヌワシを駆る――騎馬鷹狩民族の実践と技法

第4章 イヌワシを飾り、魅せる――鷹具と鷹匠装束の民族鳥類学

第5章 イヌワシを受け継ぐ――騎馬鷹狩の伝統と文化変容

終章 イヌワシと鷲使いの環境共生観――カザフ騎馬鷹狩文化の脆弱性レジリエンス

付録 鷲使い用語集

 

内容

モンゴル西部のカザフ人たちによって、1300年にわたり受け継がれてきた騎馬鷹狩文化。イヌワシと暮らす鷲使い(イーグルハンター)たちとの400日間におよぶフィールドワークからその実態を明らかにする。

 

 

 

橋本栄莉 2018 『エ・クウォス』

橋本 栄莉

 2018 『エ・クウォス』 九州大学出版会

 

エ・クウォス

エ・クウォス

 

 

目次

はじめに

序 章 動乱の時代と予言

 第1部 「予言者」の歴史的生成過程

第1章 予言者/魔術師の成立

第2章 内戦・平和構築と予言者

 第2部 経験の配位

第3章 多産と時間

第4章 不妊と予言

 第3部 クウォスの顕現

第5章 「予言の成就」としての国家の誕生

第6章 「エ・クウォス」の経験をめぐる真と偽

第7章 存在の別様式への気づき

終 章 隠された経験の領域

 

内容

本書は、スーダン地域における「予言者」の歴史的生成過程を明らかにするとともに、ヌエル社会において語り継がれてきた予言が、人びとの紛争経験や出来事をどのように形づくってきたのかを、約19か月の現地調査に基づき明らかにしようとするものである。19世紀に存在したヌエルの予言者ングンデンによってつくられた予言の歌は、現在に至るまで歌い継がれ、ヌエルの人びとが苦難の経験を語るすべとなってきた。「エ・クウォス」とは、ヌエルの人びとがさまざまな出来事に直面した際に「予言が成就した」という意味合いで用いる表現である。本書は、内戦、平和構築、悲願の国家独立、そして再び内戦へと突入する南スーダンの動乱の時代に、予言者への信念と疑念の間で揺れるヌエルの人びとが、さまざまな想像力とともに不幸や不条理を語る技法を探究したものである。

 

 

 

 

米山俊直 1968 『文化人類学の考え方』

米山俊直

 1968 『文化人類学の考え方』 講談社(現代新書)

 

 

目次

第一話 文化人類学とは

第二話 フィールドワークの話

第三話 人間関係の幾何学 ――親族名称と親族組織

第四話 文化のしくみ

第五話 文化の進化

第六話 現代の研究

附録 読書ガイド

 

内容(表紙より)

 われわれは、多様な生活慣習のなかで生きている。その生活慣習が、さまざまな個別文化をつくりあげる。“人間の科学”といわれる文化人類学は、個別文化の調査・分析から、文化の普遍的な法則を見出し、そこに写しだされる人間行動の諸相を、明らかにする。世界各地を歩いて得た、著者の多くの体験は、文化人類学の柔軟な発想が、いかに人間理解に役立つかを証明する。

 

 

一言コメント

 1968年初版発行と、新書版の人類学入門としては最古(たぶん)の部類に入る一冊。最近話題のレヴィ=ストロースなんてこれまでの人類学の焼き直しに過ぎない[142]とか、言ってることはいつの時代も変わらないんだなぁと微笑ましくなります。さすがに古いので今の初学者にはおすすめしませんけれど、日本の人類学受容史という点から見てもいろいろ興味深い一冊です。

岩田慶治 1996 『<わたし>とは何だろう ――絵で描く自分発見』

岩田慶治

 1996 『<わたし>とは何だろう ――絵で描く自分発見』 講談社(現代新書) 

 

目次

PartⅠ 絵で描く自分発見

扉のまえで

1 人生の眺め

2 からだの世界から魂の空間へ<入る>

3 そこ ――日常であって非日常の空間

4 自分が見えてくる

5 シンクロニシティ空間

6 水のもと・不生の水

7 答えてくれ、あなたは誰か

8 飛び立つ

PartⅡ 自分史のなかの文化人類学

1 混沌からの出発

2 普遍へ

あとがき

 

内容(表紙より)

 わたしとわたしの周りの世界とは別のもの?対象として世界を捉える知を捨て、じかに自然に感応しつつ、山川草木のなかに自分という風景を描き出す。

 

一言コメント

 後期岩田思想のエッセンスがつまった文化人類学エッセイ。アニミズムについての観察を基に、世界と浸透しあいつつわずかに浮かび上がる「わたし」について、平易ながら独自の思考を巡らせた一冊です。昨今はやりのインゴルドらの議論とほぼ同じことを、岩田に連なる京都学派系列の人たちはずっと早くから言っていたわけなので、今こそ読み直して評価すべきところはきっちり評価すべき時のように思います。

松嶋健 2014 『プシコ ナウティカ ――イタリア精神医療の人類学』

松嶋健

 2014 『プシコ ナウティカ ――イタリア精神医療の人類学』 世界思想社 

 

目次

はじめに:「ものがある」という経験

序章 精神医療をめぐる「生」の人類学

 

第I部 イタリア精神医療の歴史と思想

第1章 イタリアにおける精神医療の展開

第2章 フランコ・バザーリアの思想とその実践

 

第II部 イタリア精神保健のフィールドワーク

第3章 病院から出て地域で働く

第4章 主体性を返還する

第5章 一人で一緒に生きる

第6章 〈演劇実験室〉と中動態

第7章 歓待の場としての「わたし」と「地域」

 

終章 生きているものたちのための場所

 

内容

なぜ精神病院を廃絶したのか? 精神病院から地域への移行で何が生じたか。地域精神保健サービスの現場でいま何が行なわれているのか。イタリア精神医療の歴史と現状を展望し、「人間」を中心にすえた、地域での集合的な生のかたちを描く。