太田好信・浜本満(編) 2005 『メイキング文化人類学』
目次
第1章 ファーストコンタクト再演
― 博物学と人類学の間(浜本 満)
第2章 媒介としての文化
第3章 村のなかのテント
― マリノフスキーと機能主義(浜本 満)
第4章 見晴らしのよい場所
― グリオールとドゴン研究(浜本 満)
第5章 民族誌のメイキングとリメイキング
第6章 未完のフィールドワーク
― ベネディクトと『菊と刀』(慶田勝彦)
第7章 私の野蛮人
第8章 民族誌を再演する
― ターナーとパフォーマンス(慶田勝彦)
第9章 文化への焦点化
― ギアツの解釈人類学(清水 展)
第10章 首狩の理解から自己の解放へ
― ロザルド夫妻とイロンゴットの交感(清水 展)
第11章 いま、フィールドで何が起きているか
― フィールド調査と民族誌についてのいくつかの疑問(太田好信)
内容(出版社サイトより)
ダーウィン、ボアズ、マリノフスキー、グリオール、ミード、ベネディクト、レヴィ=ストロース、ターナー、ギアツ、ロザルド夫妻……巨人たちの理論はいつもフィールドから生れてきた。知の立ち上がる瞬間を捉え直す、人類学への熱い招待状!
一言コメント
これは本当に良い本。高名な文化人類学者とその理論に関するオムニバス形式の概説書で、人類学者たちのフィールド経験に焦点を当てながら、どのように各々がキャリアと理論を形成してきたのか跡付けてゆくところが特徴になっています。特に人類学は作品と作者の経験とが緊密に結びついた、良くも悪くも人文学的要素を強く持つ学問なので、本書の観点はそれぞれの理論についての理解を深めるのみならず、読者自身の調査と議論についても内省を促す契機となるでしょう。
松園万亀雄(編) 1982 『社会人類学リーディングス』
松園万亀雄(編)
社会人類学リーディングス〈1〉 (1982年) (アカデミア・リーディングス文化人類学〈2〉)
- 作者: 松園万亀雄
- 出版社/メーカー: アカデミア出版会
- 発売日: 1982/06
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目次
解説 松園万亀雄
Ⅰ 社会人類学の視野
2 今日のイギリス社会人類学 R・ファース
Ⅱ 親族と部族
3 マリノフスキーと親族研究 M・フォーテス
4 部族および部族社会の概念 M・H・フリード
Ⅲ 全体環境と社会組織
5 二つの狩猟社会におけるフラックスの重要性 C・M・ターンブル
6 分節リネージ――侵略的領域拡張の組織 M・D・サーリンズ
7 平行イトコ婚の構造 R・F・マーフィ/L・カスダン
8 ポリネシア諸社会における適応分化 M・D・サーリンズ
Ⅳ 農民社会の構造
9 メソアメリカと中部ジャワの閉鎖的農民共同体 E・R・ウルフ
10 中国人の同居集団の発展過程 M・L・コーエン
11 日本の農村社会 ――規範・制裁・追放 R・J・スミス
内容(巻頭言「今なぜリーディングスか」より)
一つの学問のおもしろさを知り、深く理解し、さらに自分の研究する力を育てていくのには、すぐれた専門の論文を読むのがよい。共通の知識として知っていなければならない古典的論文、特定の問題についての基本的な寄与、最先端をいく論考、展望を与えてくれる論文、これから発展する萌芽を秘めた研究などを読むのがよい。文化人類学(民族学)でもこれは同じことである。このリーディングスは、厖大な文献のなかから分野別に厳選された論文を集め、文化人類学を学ぶ者、研究する人たちに提供する。教材として、また研究上の参考として活用され、わが国におけるこの学問の発達に資するのが目的である。
一言コメント
『文化人類学入門リーディングス』の兄弟編。個人的な印象としてはこちらのほうがちょっと古びている感じ。それにしても続刊が出なかったのは惜しまれます。なお2010年代の人類学論文についてのリーディングスに類するものとして、現代思想の特集『人類学の時代』をおすすめしておきます。
田口陽子 2018 『市民社会と政治社会のあいだ ――インド、ムンバイのミドルクラス市民をめぐる運動』
田口陽子
2018 『市民社会と政治社会のあいだ ――インド、ムンバイのミドルクラス市民をめぐる運動』 水声社
市民社会と政治社会のあいだ: インド、ムンバイのミドルクラス市民をめぐる運動
- 作者: 田口陽子
- 出版社/メーカー: 水声社
- 発売日: 2018/11/05
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
目次
まえがき
序論
一 新しいミドルクラス市民像
二 個人を超えた政治に向けて
三 本書の構成
第一章 海辺のコスモポリス
二 フィールドワーク
三 「ゴミから生まれた」市民運動
第二章 市民社会と政治社会――複数の統治の相互関係
一 市民社会のポジション
二 政治社会のポジション
三 市民社会と政治社会の制度
四 政治社会と生モラル秩序
五 市民社会と政治社会のつながり
第三章 腐敗と反腐敗――市民的な価値の運動
一 日常のなかの腐敗
二 反腐敗運動
三 運動の展開
四 価値の分断と接合
五 二重性の再編
第四章 ウチとソト――複数のウチの変容と拡張
一 ウチとソト
二 ボンベイ・フラットの歴史
三 ウチの拡張?
四 ソトとの交渉
五 空間と人格の生成
第五章 個人と分人――インテグリティと関係性の可視化
一 〈分人化〉と心理学化
二 インドの分人性
三 心理計測と市民運動
四 関係性の生成と摩擦
五 個人と分人の動態
結論
一 ムンバイの市民をめぐる運動
二 市民社会と政治社会のあいだ
あとがき
内容
インド都市部の市民運動を事例に、研究者の論争、活動家の主張、運動の展開を追うことで、「市民」であるとはどのようなことであり、そこではいかなる「政治」が展開されているのかを問う人類学。
綾部恒雄ほか(編) 1982 『文化人類学入門リーディングス』
綾部恒雄・大林太良・米山俊直(編)
文化人類学入門リーディングス (1983年) (アカデミア・リーディングス文化人類学〈1〉)
- 作者: 綾部恒雄,大林太良,米山俊直
- 出版社/メーカー: アカデミア出版会
- 発売日: 1983/05
- メディア: ?
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目次
Ⅰ 文化の起源と変化
解説Ⅰ 大林太良
1 家族の起源 キャサリン・ガフ
2 未開民族の神話 A.E.イェンゼン
3 東南アジアにおける国家と王権の観念 R.ハイネ=ゲルデルン
4 民族間体系と民族学 W.E.ミュールマン
Ⅱ 文化-社会の分類・形態・機能
解説Ⅱ 米山俊直
5 親族関係の類別的体系 A.L.クローバー
6 呪術の形態と機能 E.E.エヴァンズ=プリチャード
7 土着の文明の中の小さな共同体 マッキム・マリオット
8 アフリカの社会 ルーシー・メアー
Ⅲ 文化の「普遍性」と価値
解説Ⅲ 綾部恒雄
9 文化の普遍的側面 G.P.マードック
10 未開文化における存在と価値 ドロシー・リー
11 百パーセント・アメリカ人 ラルフ・リントン
内容(巻頭言「今なぜリーディングスか」より)
一つの学問のおもしろさを知り、深く理解し、さらに自分の研究する力を育てていくのには、すぐれた専門の論文を読むのがよい。共通の知識として知っていなければならない古典的論文、特定の問題についての基本的な寄与、最先端をいく論考、展望を与えてくれる論文、これから発展する萌芽を秘めた研究などを読むのがよい。文化人類学(民族学)でもこれは同じことである。このリーディングスは、厖大な文献のなかから分野別に厳選された論文を集め、文化人類学を学ぶ者、研究する人たちに提供する。教材として、また研究上の参考として活用され、わが国におけるこの学問の発達に資するのが目的である。
一言コメント
リーディングスというと日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、要はその分野の重要論文集のことです。本書はアカデミア出版から全22巻の予定で企画され、けっきょく二冊しか出なかった「アカデミア・リーディングス文化人類学」の第一巻にあたるもの(もう一冊は『社会人類学リーディングス』)。非常に古い論文ばかりですが、改めて読むとその古さも含めて面白いです。ハイネ=ゲルデルンやマッキム・マリオットが入っているのもセンスが良い。
石井美保 2019 『めぐりながれるものの人類学』
石井美保
2019 『めぐりながれるものの人類学』 青土社
目次
まえがき
I
「人」からの遊離
小人との邂逅
水をめぐるはなし
循環するモノ
道の誘惑
Ⅱ
異形の者たち
鳥の眼と虫の眼
ふたつの問い
科学の詩学へ
Ⅲ
敷居と金槌
公共空間の隙間
フェティッシュをめぐる寓話
隅っこの力
Ⅳ
まなざしの交錯と誘惑
現実以前
流転の底で
Since it must be so
Ⅴ
世話とセワー
ささやかで具体的なこと
台所の哲学
リベリア・キャンプ
追悼されえないもの
Ⅵ
凧とエイジェンシー
島で
サブスタンスの分有
神話の樹
言霊たち
あとがき
内容
人類学で考える! 世界が聞える
フィールドで、文化人類学者が見たものとは? 学界の気鋭が書き下した27の文章は、タンザニア、ガーナ、インドから、60年安保の水俣、京都大学の「立て看」撤去問題まで、時間と空間を越えてめぐりながれる。異なっていながら同じものに満ち、分かたれていながらつながっている私たちの生のありようを鮮やかに描き出す。
鈴木清史・山本誠(編) 1999 『装いの人類学』
鈴木清史・山本誠(編)
1999『装いの人類学』人文書院
目次
装いの人類学――序にかえて 鈴木清史・山本誠
1 真綿にまつわる民族伝承 ――中国杭嘉湖地方の事例から 曹建南
2 モンゴルのフェルト作り ――「母」から「娘」へ 楊海英
3 神と交流する芭蕉布の歌 ――奄美シャーマンの巫歌と聖なる布のイメージ 中原ゆかり
4 白衣とチマ・チョゴリ ――民族のレトリックとしての韓服 岡田浩樹
5 フィリピン・イフガオ族と衣装の文化 熊野建
6 サリー/サリー以前 ――カーストと着衣規制、そして国民化 小林勝
7 スカーフに見るイスラームの多様性 中山紀子
8 ショールのレトリック ――ヨーロッパ移動民の身体イメージ 山口惠里子
9 ブランドになった民族 ――エクアドルのアンデス高地民オタバロ 山本誠
10 「服」を着始めたアボリジニ ――オーストラリア先住民と衣服 鈴木清史
あとがき 鈴木清史・山本誠
内容
人はなぜ装うのか。衣服と人間のかかわりを、世界各地の民族のもつ多様な文化を通して考える。日本繊維製品消費科学会発行の『消費科学』に発表された論文を収める。
一言コメント
左地亮子 2017 『現代フランスを生きるジプシー ――旅に住まうマヌーシュと共同性の人類学』
左地亮子
2017 『現代フランスを生きるジプシー ――旅に住まうマヌーシュと共同性の人類学』 世界思想社
目次
はじめに
序 章 ジプシーの住まいと共同性をめぐって
第Ⅰ部 旅の道具としてのキャラヴァン――定住化の時代における共同体と移動生活
第1章 変動するマヌーシュ共同体
第2章 行き詰まるキャラヴァン居住
第3章 定住化の時代におけるノマディズムの再編
第Ⅱ部 居住の道具としてのキャラヴァン――身体、他者、環境との関係
第4章 〈外〉へと開かれる住まいと身体
第5章 身体を包み、位置づけるキャラヴァン
第6章 キャラヴァンが支える沈黙の共同性
終 章 紡がれる〈私たち〉とその居場所
あとがき
内容
なぜ彼らは旅人であり続けるのか? 都市周辺の空き地に、移動式住居(キャラヴァン)をとめて暮らす、フランスのマヌーシュたち。〈住まう〉という社会的かつ身体的な実践を通して、社会変化と他者の只中で共同性を紡ぐ人々の姿を描きだす。
一言コメント
フランスの「ジプシー」であるマヌーシュの人々の移動と定住化をめぐる民族誌。開かれた身構えによって他者との共同性を作り出し、拡張された身体としての移動住居を通して空間を分節化してゆくマヌーシュたちの日々の実践が描かれています。対象やテーマのキャッチーさに比して内容はかなり重厚かつ思弁的なので、腰を据えて読むべし。2017年サントリー学芸賞、思想・歴史部門受賞作。