人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

鈴木裕之 2015 『恋する文化人類学者』

鈴木裕之

 2015 『恋する文化人類学者』 世界思想社 

恋する文化人類学者

恋する文化人類学者

 

 

目次

第1章 私と彼女と文化人類学

第2章 私は誰?――個人と民族

第3章 声の文化、音の文化

第4章 時代は変わる――国家の内と外

第5章 結婚の申し込み――女性の交換?

第6章 結婚式――ヴァージョンアップの儀式

第7章 あたらしい家族――親族関係の機微

第8章 文化人類学とともに

 

内容

これは恋の物語であり、異文化交流の物語である。アフリカで、著者は彼の地の女性アイドル歌手と恋に落ちた。結婚式は、8日間にわたる壮麗なものだった。激しい異文化の渦に巻き込まれた著者が、自らを素材に語る体験的入門書。ラヴ・ロマンス風文化人類学入門。

 

一言コメント

 アフリカの調査先で歌手として人気者だった女性と結婚した人類学者の、ある意味では究極の参与観察の記録。調査先での恋愛沙汰は裏話としてはよく聞くものの、体系立てて語られることはほとんどないので、その点でも貴重な一冊です。現在ご夫婦は日本に住んでいて、ときどき演奏会などもしているようですね。

鈴木裕之 2015 『恋する文化人類学者』

鈴木裕之

 2015 『恋する文化人類学者』 世界思想社 

恋する文化人類学者

恋する文化人類学者

 

 

目次

第1章 私と彼女と文化人類学

第2章 私は誰?――個人と民族

第3章 声の文化、音の文化

第4章 時代は変わる――国家の内と外

第5章 結婚の申し込み――女性の交換?

第6章 結婚式――ヴァージョンアップの儀式

第7章 あたらしい家族――親族関係の機微

第8章 文化人類学とともに

 

内容

これは恋の物語であり、異文化交流の物語である。アフリカで、著者は彼の地の女性アイドル歌手と恋に落ちた。結婚式は、8日間にわたる壮麗なものだった。激しい異文化の渦に巻き込まれた著者が、自らを素材に語る体験的入門書。ラヴ・ロマンス風文化人類学入門。

 

一言コメント

 アフリカの調査先で歌手として人気者だった女性と結婚した人類学者の、ある意味では究極の参与観察の記録。調査先での恋愛沙汰は裏話としてはよく聞くものの、体系立てて語られることはほとんどないので、その点でも貴重な一冊です。現在ご夫婦は日本に住んでいて、ときどき演奏会などもしているようですね。

山口昌男 1982『文化人類学への招待』

山口昌男

 1982『文化人類学への招待』 岩波書店岩波新書204) 

文化人類学への招待 (岩波新書)

文化人類学への招待 (岩波新書)

 

 

目次

はじめに

Ⅰ 文化人類学ポーランド

Ⅱ 「交換」の経済人類学

Ⅲ 構造論人類学の流れとリオ族の交換

Ⅳ 女性の宇宙論的位相

Ⅴ 政治の象徴人類学

Ⅵ 再びポーランド

はい、山口さん、私はこのように聞きました 大江健三郎

あとがき

 

内容

ポーランドの知的風土に始まり、交換という経済行為の背後に見えがくれする宇宙論的構図、女性が開示する文化のルーツ、政治の演劇的解釈など、現実の多義性を読みとき文化の全体像を回復しようとする試み。文化人類学が内包する知の挑発的部分のありかを示し、学問の形式を使って知の深層にふみこもうとする人のための入門書

  

一言コメント

 山口昌男が「文化人類学入門」と題しておこなった市民講座の講演に基づく入門新書。マリノフスキーから書き起こして機能論、贈与論、構造主義、象徴論と語ったうえで山口自身の道化論に寄せる形でマリノフスキーの友人であった劇作家ヴィトケヴィッチで締めるという独特の構造を取っています。人類学の包括的な知識を得るというよりは、読み物として学問のエッセンスを感じるための一冊です。

『現代思想 1981年11月号 特集=人類学の変貌』

現代思想 1981年11月号 特集=人類学の変貌』

 

目次 

連載・思考の生理学・11 

 脳と言語 (千葉康則)

連載・文化のトポロジー・第十一回 

 ナイルのほとりにて (矢島文夫)

歩行と思索 

 「べきである」 (長野敬)

 予測と警世 (村上陽一郎)

マクシム・デュ=カンまたは凡庸な芸術家の肖像・第二部・4

 シシリー島の従軍記者 (蓮見重彦)

音楽とマニエリスム・第十四回

 古典主義の陥穽 ――ストラヴィンスキーの場合 (遠山一行)

 対話・現代芸術の戦略 (工藤哲巳中村雄二郎)

報告

 ハーバーマスの来日 (清水多吉)

 

特集=人類学の変貌

講演とシンポジウム

 パフォーマンスとしての人類学 (ターナー大橋洋一(訳))

 シンポジウム・人類学の舞台 (郡司正勝中村雄二郎高橋康也山口昌男)

人類学の行方

 「劇場国家」論の可能性 (青木保)

思想としての人類学

 人類学と社会哲学 (今村仁司)

 構造主義とは何か (ゲルナー高橋和久(訳))

 暴力と表象 ――神話テクストにおける (ジラール、大原えりか・永井均(訳))

人類学とフォークロア

 境にひびく音 ――都市のフォークロア (宮田登)

テクストとしての人類学

 テキスト解読の祝祭性 (大室幹雄)

 レナルトと民族誌学 (クリフォード、橋本和也(訳))

 対話・人類学を超えて (カッフェーラー・山口昌男)

 

短期集中連載

 構造とその外部 (浅田彰)

特別論文

 論理学は将来どうなるか (中村元)

連載・経済人類学の眼・第九回

 バルカンの社会主義における民族と国家 (栗本慎一郎)

眼の発生・23

 仮面と詩劇と (栗原彬)

研究手帖

 アンダーグラウンド・バイブレイション (川本三郎)

 

青土社 2017 『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=人類学の時代』

青土社

 2017 『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=人類学の時代』 青土社 

現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎人類学の時代

現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎人類学の時代

 

  

目次

討議

人類の自然 (中沢新一+山極寿一)

 

テクスト

自然の構築 ――象徴生態学と社会的実践 (Ph・デスコラ、難波美芸(訳))

アンデス先住民のコスモポリティクス ――「政治」を超えるための概念的な省察 (M・デ・ラ・カデナ、田口陽子(訳))

複数種の民族誌の登場 (S・E・カークセイ+S・ヘルムライヒ、近藤祉秋(訳))

根こそぎにされたランドスケープ(と、マツタケ採集という穏やかな手仕事) (A・R・ツィン、藤田周(訳))

自然の島々 ――モンゴル北部における孤立したモノと凍りついた精霊たち (M・A・ピーダーセン、里見龍樹(訳))

大地、空、風、そして天候 (T・インゴルド、古川不可知(訳))

 

人類学の自然

ブリコラージュ、進化、メーティス ――文化と自然の統合 (出口顯)

自然主義を越えて ――自然と身体の人類学のための一考察 (箭内匡)

絶滅の人類学 ――イヌイトの「大地」の限界条件から「アンソロポシーン」時代の人類学を考える (大村敬一)

社会の内なる野生 ――宇宙論の境界を更新するイヌとオオカミ (石倉敏明)

皮膚という表面 ――パナマ東部先住民エンベラの身体の形象 (近藤宏)

 

×哲学

非・ホーリズム的転回 ――人類学から現代哲学へ (清水高志)

どのように線を描けばよいのか ――ティム・インゴルドの場合 (柳澤田実)

 

×美学

装いの系譜学 ――記号学的モデルとしての紋章から有機的モデルとしての織物まで (T・ゴルセンヌ、筧菜奈子(訳))

イメージにおける自然と自然の「大分割」を超えて ――イメージ論の問題圏(三) (岡本源太)

 

内容

人類学のこれからを最新の知見から解き明かす

 

人間と自然との関係性のネットワークを再考しながら、今とは別の生のあり方を構想する試み。「存在論的転回」を果たした人類学の汲み尽くしえないポテンシャルを総覧。『現代思想*人類学のゆくえ』の続編にもあたる、人類学の最前線。

 

一言コメント

 格段にレベルの上がった『人類学のゆくえ』の続編。まず原著論文としては出口論文と箭内論文がすばらしい。最新動向をきっちり踏まえつつ自由にイメージを飛翔させてゆくあり方には、日本語でもCultural Anthropology誌的なスタイルで試行することが可能であることを確信させてくれます。また翻訳論文についてはセレクトが良く、訳文の精度も(完全ではないにせよ)大幅に向上しているので、現代人類学のリーディングスとしても有用です。2018年以降は続編が出ていないようで、それだけが残念です。

中沢新一(監修) 2016 『現代思想2016年3月臨時増刊号 総特集=人類学のゆくえ』

中沢新一(監修)

2016 『現代思想2016年3月臨時増刊号 総特集=人類学のゆくえ』 青土社 

現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎人類学のゆくえ

現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎人類学のゆくえ

 

  

目次

討議Ⅰ

人類学=物語的想像力の“不自由な”跳躍 (中沢新一上橋菜穂子)

 

テクスト

自然の人類学 ――コレージュ・ド・フランス教授就任講義[二〇〇一年二月二九日(木)] (Ph. デスコラ、矢田部和彦(訳))

歴史のモノたち ――出来事とイメージの解釈 (M・ストラザーン、深川宏樹(訳))

アメリカ先住民のパースペクティヴィズムと多自然主義 (E・ヴィヴェイロス・デ・カストロ近藤宏(訳))

形而上学的転回? ――ブルーノ・ラトゥール『存在様態探求 近代の人類学』について (P・マニグリエ、近藤和敬(訳))

ガタリと人類学 ――アボリジニと実存的領土 (B・グロチュスキ、荒武裕一郎+石川典子(訳))

『ドゥルージアンの交差点』序論 (C・イェンセン+K・ロジェ、藤井真一(訳))

 

討議Ⅱ

新たな〈現実〉を描く ――「静かな革命」以降の人類学と科学・自然・人間 (春日直樹檜垣立哉)

 

人類学の「存在論的転回」

イメージと力の人類学 ――または、人類学はなぜ思想的企てであり続けるべきなのか? (箭内匡)

方法論的独他論の現在 ――否定形の関係論にむけて(久保明教)

人新世の時代における実験システム ――人間と他の生物との関係の再考へ向けて (鈴木和歌奈+森田敦郎+L・N・クラウセ)

『森は考える』を考える ――アヴィラの森の諸自己の生態学 (奥野克巳)

動物を夢見る ――北方狩猟民カスカにおける動物への畏れからみる対称性 (山口未花子)

対岸のアラベスク ――マイケル・タウシグと樺太先住民 (金子遊)

 

×哲学

アンチ・ナルシスの射程 ――ヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学』に寄せて (檜垣立哉)

幹-形而上学としての人類学 (清水高志)

普遍的精神から、ネットワーク状のプシューケーでなく、特異的プシューケーへ ――思考の脱植民地化とEndo-epistemologyへの転回のために (近藤和敬)

 

×芸術

キリスト像のキマイラ的変容 ――イメージの記憶をめぐる歴史人類学試論 (水野千依)

 

チャート

今日の人類学地図 ――レヴィ=ストロースから「存在論の人類学」まで (石倉敏明)

 

内容

人類学の「存在論的転回」にして「静かな革命」!

「自然/文化」の大分割を超えた新しい〈人間〉の様態を活写する未聞の試行。

中沢新一氏監修による総力特集。 

 

一言コメント

 文化人類学の最新潮流を紹介しつつ現代思想や他分野との接点を探るという趣旨は非常に良いのですが、翻訳テクストの選定基準のちぐはぐさや、実際のところこの潮流とは無関係の中沢新一を中心にしたチャートなど、疑問に感じる場所もかなり多いように思います。また誰かも指摘していた通り、一部の訳文には大きな問題があることも確かです。「討議Ⅱ」と「人類学の「存在論的展開」」のパートは良いので、本書についてはそこだけ読めばよいかなと。文化人類学の最新潮流について日本語論文を通して知りたい人は、むしろ本書の続刊にあたる『人類学の時代』から手に取ることをお勧めします。 

 

現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎人類学の時代

現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎人類学の時代

 

 

追記

見つけました、これですね。評価は差し控えます。

milleplateaux.hatenablog.com

フレーザー 1994 『図説 金枝篇』

フレーザー、ジェームズ

 1994(1978初版、1890年原著初版) 『図説 金枝篇』メアリー・ダグラス(監修)、サビーヌ・マコーマック(編)、内田昭一郎(訳)、東京書籍 

図説 金枝篇

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  • 作者: サージェームズジョージフレーザー,メアリーダグラス,サビーヌマコーマック,内田昭一郎
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 1994/10/31
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目次

メアリー・ダグラスの序文
J・G・フレーザーによる1911年版への序文
編者まえがき
編集ノート

第一部 呪術と王の成り立ち
第一章 森の王
第二章 祭司たる王
第三章 共感呪術
第四章 呪術による天候の支配
第五章 神格をもつ王
第六章 樹木崇拝
第七章 植物の生育と性の関係
第八章 聖なる結婚
第九章 オーク崇拝

第二部 タブーと霊魂の危難
第一章 王者の重荷
第二章 霊魂の危難
第三章 タブーとされる行動と人物
第四章 未開人への感謝

第三部 死にゆく神
第一章 神々の死
第二章 聖なる王を殺すこと
第三章 王殺しに代わる慣習
第四章 樹木の霊を殺す

第四部 アドニス
第一章 アドニス神話
第二章 シリアにおけるアドニス
第三章 古今のアドニス

第五部 穀物
第一章 デメテルとベルセポネ
第二章 ヨーロッパその他における「穀物の母」と「穀物の娘」
第三章 リテュエルセス
第四章 神を食う儀式

第六部 身代わり
第一章 災厄の転嫁
第二章 身代わりについて
第三章 古代における人間のいけにえ
第四章 メキシコにおける神殺し
第五章 サトゥルナリア祭とそれに類する農神祭

第七部 麗しき神バルデル
第一章 天と地のあいだ
第二章 バルデル神話
第三章 ヨーロッパの火祭り
第四章 火祭りの意味
第五章 人間を焼き殺すこと
第六章 夏至前夜に摘む魔法の花
第七章 バルデルとヤドリギ
第八章 体から離れた霊魂
第九章 金枝
第十章 ネミよさらば

 

内容

フレーザーの名著,『金枝篇』が読みやすい一冊に!

殺される祭司、共感呪術、タブー、アドニス、オーク信仰…。

民族学の古典『金枝篇』に170点もの資料図版を挿入し、膨大かつ難解な内容のエッセンスを平易に解説した決定版。

 

一言コメント

 全13巻にもおよぶフレーザーの大著『金枝篇』を要約し、170点もの関連図版を挿入して一巻にまとめた労作。かの有名なネミの森の司祭がなぜ殺されねばならないかについて、古今東西の神話を渉猟しながら解き明かしてゆく、19世紀民族学の精華です。もちろん今の目から見ると、西洋を頂点として疑わない単純な進化主義や、資料の扱いの恣意性など問題は多々ありますが、少なくとも王殺し神話をめぐる資料としての、また優れた読み物としての価値は減じることがないでしょう。

訳文については、序文は人類学の概念を理解していない感じでちょっとですが、それ以外の本文は読みやすいです。なお『図解 金枝篇』は上下巻で講談社学術文庫からも出ていますが、こちらは未読のためどちらの訳が良いかはわかりません。

 

図説 金枝篇(上) (講談社学術文庫)

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  • 作者: ジェームズ.ジョージ・フレーザー,メアリー・ダグラス,サビーヌ・マコーマック,吉岡晶子
  • 出版社/メーカー: 講談社
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図説 金枝篇(下) (講談社学術文庫)

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  • 作者: ジェームズ.ジョージ・フレーザー,メアリー・ダグラス,サビーヌ・マコーマック,吉岡晶子
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