人類学の書籍紹介

人類学の文献を(読んだものは)コメント付きで紹介します

里見龍樹 『「海に住まうこと」の民族誌』

里見龍樹

 2017『「海に住まうこと」の民族誌 ――ソロモン諸島マライタ島北部における社会的動態と自然環境』風響社

 

目次

はじめに

序論 別様でありうる「住まうこと」─非同一的な生の民族誌に向けて
第一章 「海に住まうこと」の現在─民族誌的概観
第二章 海を渡り、島々に住まう─移住と人工島群の形成史
第三章 海を渡る生者たちと死者たち─葬制、移住と親族関係
第四章 「カストム/教会」の景観─現在の中のキリスト教受容史
第五章 夜の海、都市の市場─漁業と「住まうこと」の現状
第六章 生い茂る草木とともに─土地利用と「自然」をめぐる偶有性
第七章 想起されるマーシナ・ルール─「住まうこと」と偶有性の時間
結論
あとがき

 

内容

サンゴを積み上げた人工の島に暮らす人々。悠久の昔から続く南洋の長閑な風景と見まがう。だが、ひとびとの日常に深く寄り添うと、そこには絶えざる変化と切り結ぶ日々新たな生活があった。同時代を生きる者同士としての共振から新たな民族誌を展望。

 

 

一言コメント

 人類学会若手のエース里見氏の博論出版であり、第45回澁澤賞と第15回アジア太平洋研究賞(井植記念賞)のダブル受賞作。堅実なフィールドワークの成果に基づきながら、他者の現実を通して我々の自明を根底から揺さぶってゆく、人類学の潜勢力を改めて知らしめる一冊。特にこれから博論を書く人は参考になるので目を通しておくべき。